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日記と小説に似ても似つかないモノです
by kujikenjousiki


移転完了

引越し完了~w

何か色々勝手にリンク張っちゃったぃ。

………マァイイカ!!(゚Д゚)

とりあえずアド載せて置きますのでこれからはそっちでよろしくお願い致しますorz

http://yaplog.jp/kujikenjousiki/
# by kujikenjousiki | 2006-02-12 14:57 | 日記

ふぅ

見辛いらしいです。

というわけでブログ変えるかもー。
でもそっちでも見づらかったら閉鎖しかねぇな・・・

まぁそんな具合ですのでヨロシクヾ(´ω`)ノ
# by kujikenjousiki | 2006-02-12 03:35 | 日記

気紛れ話 ~FAIRY SNOW~(1)

「あの、すいません」

最初誰に対して言っているのか分からなかった。

唱えたのは女。

囁くような、ただ呼びかけるだけの、他に何ら意味などない言霊。

その言葉が、俺に対して放たれたという事に気づくのには、数秒が必要だった。

辺りを見回す。

雪が音も無く降り積もるこの静かな公園に存在するのは俺と彼女、二人だけだった。

「……俺?」

しかいないとは解っていても、訊かない訳にもいかないだろう。

俺は静かな声で呼びかけに応じた。

「はい…良かった、気づいて貰えて」

ホッと安堵の息を吐く。

吐き出された息が瞬時に凍り、白い靄となって消えていく。

可愛い子だな、と思った。

少し長めの、癖の無い黒髪。

前髪に隠れて見えにくいが、まだあどけなさの残る顔立ち。

眼は静かな光を湛えて、こちらを視ている。

「…妙な言い回しだ」

視線を彼女から外し、ポケットから取り出した煙草に火を付ける。

人を観察するのは趣味じゃない。観察されるのも。

彼女は、何が珍しいのか、少し離れた位置から俺をまじまじと見つめている。

それに、こんな夜更けにうろつくような不審者の話をまともに聴く程、お人よしでも無い。

「あぁ、すいませんすいません」と、俺の心を読んだかのように謝る。

…まるで俺が悪者のようじゃないか。

「いや、いい」

頭を上げさせ、向き直る。

とはいえ話を聴く気も無い。

俺は無視を決め込むように彼女の横を通り、去ろうとした。

が。

「あ…ま、待って…ください」

ギュウ、と裾を捕まれる。

カミサマ、俺何かしましたか。

紫煙を溜息代わりに吐き、振り返る。

「…何」

彼女の顔を見据える。

なんというか…彼女はそう、必死だった。

普段どういうコミュニケーションの取り方をしているのか知らないが、凄く興奮している。

目尻には涙を溜め、何事かを伝えようと必死なのである。

俺は、また溜息と一緒に紫煙を吐く。

もう逃げられんのだろうなぁ。とか考えながら。

アブナイ人に関わりたく無いというのもあったが、それ以上に。

予感がするのだ。

関わったらタダでは済まないという、絶望的なまでの予感が。

「あの、あの…」

というか、何でこの娘はここまで話下手なのだろうか。

さっさと本題を言ってくれればこちらとしても反応の取り様があるのに。

彼女は、俺に何かを言おうとする度に噛む。

まるで、会話をするのがこれが初めてだとでも言うかのように。

最早逃げる気さえも失って、俺は彼女の言葉をボンヤリと待ち続けた。

「あの…あの、あ、貴方の、貴方の魂をください!」

彼女は、ようやく俺に話を伝えられた、という事実に喜んでいる。

そして、それと同時に予感が的中した事を知り、俺は三度、紫煙を吐いた。

                          ◆

俺の名前は龍座一石(りゅうざ いっこく)

古くから伝わる神道の道筋を往く一族の一人だ。

つまりはまぁ、坊さんの息子ってとこだ。

そんな俺だからか、生まれた時から変な能力を持ってた。

実家である寺の和尚、俺の爺さんの言う話では能力自体はそんな珍しいもんでもないらしいが、俺個人としての資質が並外れているらしい。

例えば、幽霊を視る事のできる人間。

自分の目でそれを見る事ができる人間は、実は結構一杯いる。

TVやカメラ、ビデオの等の映像媒体を通せば、普段見る事のできない人間にも見れる。

幽世と現世の差なんて実際そんなもんだ。

だが、俺はちょいと話が違うらしい。

話というか何と言うか。

爺さんは人としての〝根本〟、造りが違うと言っていた。

俺は幽霊だったら見るだけではなく触れるし話せる。

相手が妖怪って呼ばれるモノなら、闘って祓う事もできる。

つまりは、そんな能力だ。

霊的濃度が高いというか、俺の魂が幽世と現世の境目に位置しているっていうのが理由らしい。

だからだろうか。

俺は彼女の声に応えてしまったのは。

                            ◆

「断る」

俺は即座に切って捨てた。

今の台詞で、彼女が人ではない〝何か〟だというのは十分に知れたから。

「えぇぇ」

素直に「いいよ」とでも言うと思っていたのか。

彼女は涙目っていうか泣きながら悲鳴を上げた。

「何でですかぁ?折角ちゃんと訊けたのにぃ」

グスグスと鼻をすすりながら、批難囂々。

「何でも何も、上げたら俺死ぬじゃないか」

何で俺が死んでまで彼女に魂やらねばアカンのか。

「だってだって、お腹減りましたよ?生まれたばっかりなんですから」

「知りません。というか何で俺なんですか」

恐らく、彼女は雪女だろう。

俺は魂の質柄、化生に命を狙われる事が多い。

流石にこんな捻りも何もない催促は初めての事だが…。

「うぅ、ひもじい上に寒くて死にそうです。死んだらどうするんですかー」

「何で雪女が凍え死ぬんだ。それにそんなに腹減ってるならその辺の山でも潜って精気の吸収でもしてくればいいだろ」

「ヤです。山の精気って青臭くて私のグルメな舌に合わないんですもの」

ならそのまま潔く逝け。

そうは思ったが、流石に口に出すのを抑えた。

「そうか、ではさらば」

今度こそ、普通の溜息を吐きながら俺は歩き去る。

いい加減付き合うのにも疲れ果てたし、何より彼女が化生と分かったのだ。

このまま相手をしていたら本当に魂を食われかねん。

「あー、待ってくださいお兄さーん」

俺は無視して歩く。

もうすぐ家だし、生まれた場所から出ずに生きるのが彼女等化生の慣しだ。

背中からは批難の声。

さっきと比べて凄く饒舌になってるのは幻聴としよう。

きっともう会う事も無いだろう。

                           ◆

実家から離れた場書にある学校に進学するために、俺は安アパートの一室を借りている。

初めての一人暮らしは何かと困難を極めたが、それも初めの内だけ。

ある程度落ち着いてくると、この生活もまた心地良かった。

ただ厄介なのは、合鍵の場所を入学した学校でできた唯一のマヴダチに知られてしまった事だろうか。

俺がバイトから帰宅すると、何故か人の部屋でくつろいでいる馬鹿を見る事も少なくない。

そして、今日もまた俺の部屋から明かりが漏れている。

溜息を吐きながら、今にも崩れそうなサビサビの階段を登る。

そして、鍵が勝手に開けられているのを確認し、ドアノブを回す。

「ただいま…」

「おう、お帰り~」

寝そべりながらTVを見、部屋の主に背中を見せて挨拶をするこの男。

壬生俊之(みぶ としゆき)

不良よろしく頭を金髪に染め、片耳にピアス。

ただコイツの場合見かけだけで、腕っぷしはからっきし。

こないだはちょっと本気で喧嘩をした彼女に伝説のパロ・スペシャルをかけられ、マジ泣きしていた。

まぁ女子プロな彼女相手に喧嘩を売ったコイツの落ち度だが。

今は深夜のエロトーク番組に熱中症気味だ。

「一石、おみやげ…は…」

何を期待していやがったのか、振り向き俺に手を差し伸べようとしていたバカの表情が凍る。

「ねぇよそんなもん」

俺はそう言いながら靴を脱ぎ、台所に移動しようとしたが、俊之に腕を捕まれ足を止める。

「何だ?ホントに何にもねえぞ。それよか俺は飯を…」

振り向きながらその手を払おうとして、俺もまた凍りついた。

「お兄さん、私にもご飯~」

それが当り前とで言う様に、彼女は居た。

「何でいるぅ!?」

何でだ、化生は地縛霊みたいなもんじゃなかったのか。

焦りで思考がグルグルする。

とゆうか、この娘様。

ご丁寧に実体化までしてやがる…!

唖然としている俊之に俺は必死に語りかける。

「いや、ホラ、外は寒そうだし、この娘身寄りも無いっていうんでね?ちょっと飯でも食わせてやろうかーなんてね!?」

必死で偽る俺の乾いた笑いが部屋に響く。

だが、その声に俊之は耳も貸さず雪女を見つめ、見つめられている雪女はニコニコと俺に柔らかい微笑を向けている。

あー…俺何か凄くバッドエンドに近い気がする…。

そして、遂にその終りは始まった。

俊之の目に一瞬でブワッと涙が溢れ、夜中だというのも忘れ叫んだ。

「一石が女の子を連れ込むような色情狂いになったぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」
# by kujikenjousiki | 2006-02-07 17:27 | 小説